実験考古学と人は呼ぶ 『古代ローマの饗宴』の著者ニーナ 7

長い時がながれ、『古代ローマの饗宴』(平凡社)は2011年5月に、講談社学術文庫版として復刊されました。

初版発行から20年。スパゲッティを甘いケチャップでからめて食べるアメリカ仕込みのナポリタンは人気が失せ、21世紀の日本では、イタリア本国と同じ味つけのパスタが家庭の食卓にのぼります。
かつてニーナが探すのに苦労した調味料も、そのほとんどが、近くのスーパーで手に入るようになりました。

こうした世相の反映でしょう。文庫化された『古代ローマの饗宴』は、レシピのページがとりわけ読者の関心を呼びました。

『古代ローマの饗宴』講談社学術文庫

(『古代ローマの饗宴』 (講談社学術文庫 表紙)

 

日本イタリア京都会館主催により、リストランテ「カーザ・ビアンカ」で開かれた2011年秋の 「ミニ講義つき試食会」では、イタリア共和国から騎士(カヴァリエーレ)の称号を贈られている那須昇シェフが、腕をふるってくださいました。

著者から送られてきたメニューをもとにして、『古代ローマの饗宴』の目次にほぼ沿う形で再現された料理は、農民たちのローマが、共和制から帝政へと拡大してゆく過程を裏づけます。

試食に先立ち、訳者の武谷がそれぞれの時代の「詩人の証言」を、引用をまじえて解説しました。

 

ミニ講義:『古代ローマの饗宴』より「古代ローマ詩人たちの証言」

(1) カトーの時代〈第3章〉…紀元前2世紀、「日々の務め」と「モレトゥム」
(2) カエサルの時代〈第4章〉…紀元前1世紀、ヴァロの『農事論』
(3) キケロ、そしてクレオパトラとアントニウス〈第5章〉… 紀元前1世紀、プルタルコス『英雄伝』より
(4) ホラティウスの酒杯〈第6章〉…紀元前1世紀、『歌章』および『諷刺詩集』
(5) ペトロニウスが語るトリマルキオの饗宴〈第7章〉…紀元1世紀前半、皇帝ネロの側近で「美の粋判官」と呼ばれた政治家は、『サテュリコン』の作者と見なされる
(6) 饗宴詩人マルティアリス〈第8章〉…紀元1世紀後半に活躍、104年に死亡、『エピグラム(警句)集』
(7) 諷刺詩人ユヴェナリス〈第9章〉…紀元1世紀後半に活躍、127年頃死亡、『諷刺詩集』

 

 

 試食会のメニューとレシピ

(2011年試食会 日本イタリア京都会館主催 : リストランテ「カーザ・ビアンカ」)

アンティパスト

 リブム(パン) カトー『農事論』75 p365(本文p49)
 モレトゥム(チーズのペースト)  ヴェルギリウス風の詩 p396(本文p57)
 アスパラのパティナ(オムレツ)『料理書』4・2-6 p393(本文p314)

料理を披露する那須昇シェフ 松井さん撮影

料理を披露する那須昇シェフ

プリモピアット

 惣菜風パティナ(ラザーニャ)『料理書』4・2-15 p375(本文p156)

ラザーニャ惣菜風パティナ

惣菜風パティナ(ラザーニャ)

セコンドピアット

 骨なしの若鶏(ガランティーヌ)『料理書』6・8-14 p386(本文p213)

骨なし若鳥のガランティーヌ

骨なしの若鶏(ガランティーヌ)

ドルチェ

 オプロンティスのカッサータ オプロンティス別荘の壁画 p386(本文p210)

松井さん撮影カッサータ

オプロンティスのカッサータを解説する武谷

 

2011年度の「ミニ講義と試食会」について、「産経新聞」に報告記事を書きました。

「産経新聞」2012年1月19日

(「産経新聞」2012年1月19日 )

 

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