アグリジェントの図書館で作家マッテオ・コッルーラの講演を聞きました。「シャーシャ不在の30年 記憶には未来がある」

 

アグリジェント出身のコッルーラ氏は有力紙「コリエーレ・デッラ・セーラ」の文芸記者を長年つとめ、シャーシャの伝記『レガルペトラのマエストロ』の著者でもあります。事実上シャーシャの処女作と見なされる『レガルペトラ教区の人々』(1956年)は彼が小学校の先生(マエストロ)をしていた頃の「学級日誌」と町の年代記で、レガルペトラは貧しい故郷ラカルムートのメタファーであると、後に自ら語っています。

ルッケジアーナ図書館は、18世紀のアグリジェントの司教アンドレア・ルッケージ・パッリの個人図書館で、神学、哲学、歴史、人文主義に関わる45,000冊の蔵書が収められていました。ノーベル賞作家ピランデッロが大学生であったころ、古いアラブの写本を探しに行ったこの図書館は、ネズミとゴキブリ以外に訪問者がなく、「破滅の道」を辿っていたと1889年の手紙に記されています。幸い20世紀後半に修復がなされ、この日は主催者Don Angelo Chiulla 神父と市の協力で、異端の作家シャーシャを偲ぶ夕べとなりました。聴衆のなかに弁護士や建築家、軍警察や県警察の関係者がまじっていたのも、シチリアならではの光景です。