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シャーシャへの関心がどうして生まれたか、実際に会ったことはあるのか、どんな作品を翻訳したかを問われて、さびついたイタリア語で答えました。イタリア建国以来、シチリアには驚くほど多く作家が生まれ、ヴェルガやピランデッロを敬愛しているが、わたしにとって導きの糸はつねにシャーシャであったこと。実際に会ったシャーシャは雄弁なイタリア人とちがい寡黙な人で、こちらがショックをうけるほどゆっくりと、一語一語、かみしめるように語る作家であったこと。短篇をひとつ訳したけれど業績がないので印税が払えない、私家版の冊子として周囲に配ってもいいかとたずねる30代のわたしに、すぐにいいよと承諾してくれたこと。代表作『人それぞれに』と『単純な話』を1冊にまとめ、『ちいさなマフィアの話』として白水社から出版できたのは、彼の死から5年たって後のことでした。